【ドイツビールの世界】ラオホビア(スモークビール)の起源とバンベルク

【ドイツビールの世界】ラオホビア(スモークビール)の起源とバンベルク

バンベルク名物のラオホビアの秘密

ラオホビールって何?

ドイツバイエルン州北部、オーバーフランケンにあるバンベルク名物のRauchbier (ラオホビア)
日本語でいうとスモークビール燻製ビールのことです。
“ラオホ”はドイツ発祥の燻した麦芽を使って醸造された、スモーク香のついた独特な味を持つビアスタイルです。

バンベルクに初めて訪れて移住して早3年、今では急にラオホビアが飲みたくなっておいしく飲んでいますが、初めて飲んだ時は本当に衝撃でした。

ラオホビアの起源・偶然の産物?

ラオホビアの歴史について、
どのようにしてラオホビアが生まれたのかいくつか云われがあります。
有名なのが、
中世の頃バンベルクにあった醸造所が火事で焼けてしまったそうだ。その際にモルト(麦芽)が誤って燻されてしまった。醸造家は貧乏だったため 燻されたモルトを使いビールを醸造して売るしかなかったが、予想と反しておいしかったためラオホビアがそれ以降もつくられるようになった。
というファンタジーなものがありますが、実際は昔は多くのビールはラオホビアだったということ。
今では見られなくなった燻製麦芽が当時は主流でした。

昔のビールはほとんどラオホだった?! モルト作りの変遷

ビールを作るのに必要なのが麦芽(モルト)。主に大麦を発芽させ乾燥させたものである。
大昔から産業革命が起きるまでは、 水分を含み発芽した大麦「緑麦芽」 を乾燥させる方法は2つ。自然の力を借りて大気・天日乾燥方法と、火を焚いてその上で乾燥させる方法です。
前者の方法は今のイランの一部があるメソポタミア地方で行われ、ドイツを含め中欧では日照や湿度を含めた気候の関係で不可能なことが多く、後者の方法が一般的にとられていました。

燻製麦芽ができるまで・・・。
昔は、醸造所で麦芽を作るのは一般的なことで自家製麦芽を使っての醸造が行われていました。
そこでドイツ語でDarreと呼ばれる、いわゆる吹き抜け2階建てのような乾燥炉があり、下で火を焚き覆いの無い状態で上の階に広げた発芽麦芽を乾燥させていました。そのため、煙の香りがついてしまうことは避けられずほとんどの麦芽は燻製香がつきラオホビアがつくられ飲まれていたのです。

中央ヨーロッパの現ヨルダンにある遺跡から乾燥炉設備跡が発掘され、5000年前にはこの方法がとられていたのではないかといわれています。
ちなみに、250年ほど前までは中欧のすべてのビールはラオホビアだったといわれているとのことです。

しかし工業化が進み、木を燃やすかわりに石炭やオイルを使い麦芽を乾燥させることで”スモーク香をつけずにモルトを生産すること”が可能となり、コストも抑えられ手間のかかる昔ながらの方法は消えてきました。モルトの専門工場なども登場し、醸造所での自家製麦芽を作ることも少なくなりラオホビールはどんどん姿を消していったわけです。


Darre
約200年前のモルト乾燥炉の構造がわかるスケッチ
下の小さな口が火口の窯、この天井の上に発芽麦芽が敷き詰められます。
schlenkerla HPより
https://www.schlenkerla.de/rauchbier/geschichte.html



Booking.com

今でも変わらぬ手間と愛情をかけたバンベルクのラオホ

Spezial_Fassade3

ただ、世界でたった2件だけ、昔ながらの方法で人の手をつかいブナの木で自家製で麦芽をスモークし伝統的な方法でラオホボアを作っている醸造所がバンベルクにあります。

それが日本でもよく知られているヘラー醸造所のSchlenkerla(シュレンケルラ)と、家族経営のSpezial(シュペチアル)です。この2件はドイツのSlow Foodにも登録されています。

シュレンケルラは日本も含め海外にも輸出されているので飲んだことがある方もいるかと思います。
こちらのビールはMärzen(メルツェン)、アルコール度はやや高めの5.1%です。とにかく、色はダークで強い燻製香でパンチがあります。よくも悪くも癖が強いビールですので好みはわかれるでしょう。

シュペチアルのビールは基本バンベルク周辺15㎞以外には流通していません。
100%スモークモルトを使用しているシュレンケルラとは対照に、70%スモークと30%スモークしていないモルトを使用しているため飲みやすく、優しく燻製味が抜けていく感じです。
私の初めてのラオホビアはシュペチアルのものでした。


バンベルクに来たらとにかく飲んでほしいラオホビール。伝統を感じていただければ!